SCP-XXXX 死に至る病

scp ウイルス ミーム 情報災害 収容不可

 

アイテム番号: SCP-XXXX

オブジェクトクラス: Euclid Safe

特別収容プロトコル SCP-XXXX及びその変異体は複数の人間が死亡したいかなる地点にも発生する可能性があります。市街地でのSCP-XXXXの発生または拡大が確認された場合、ただちに周辺住民に記憶処理を行ってください。どれほど小規模であれ医学論文等で新型肺炎の報告がされた場合、それがSCP-XXXXの変異体でないかどうかを必ず調査しなければなりません。

現在までに発見されているSCP-XXXX変異体の一覧については目録を参照してください。

2013.06.02追記: チームXXXXによる撲滅作戦の進行に伴い、目録は削除されました。SCP-XXXXの事実上の根絶後、SCP-XXXX新規変異体の発生は現在までに確認されていません。

2013.06.14追記: SCP-XXXX-1を根絶する試みは現在永久的に凍結されています。

説明: SCP-XXXXはミーム性の新型肺炎です。SCP-XXXXに罹患した人間が死亡している可能性は100%であり、SCP-XXXXが原因で死亡に至った人間は現在までに確認されていません。確認されている限りではこれまでに約1005億人がSCP-XXXXによって死亡しており、この数字は地球上で誕生し死亡した全てのヒトの個体数とほとんど一致します。SCP-XXXXがいつからどのように存在していたのかは定かではありませんが、人類が誕生した時から常に新型肺炎であったと考えられています。

SCP-XXXXは高密度のミーム性を有した異常存在であり、汚染した人間の死因を新型肺炎であると観測者に誤認させます。ミーム部門で用いられている薬剤や施設の影響下に無い限り、それが肺炎として考えるのにどれほど不自然な状況であっても異常性に気付くことは出来ません。

SCP-XXXXは19██年にサイト-███で起こったミーム性異常存在の収容違反の際、鎮圧に要した██名の犠牲者の死因を数名の職員が不審に感じた事により発見されました。該当の収容違反における死因は主に頭部が内側から████するものであったのにも関わらず、それをサイト-███内で局所的に発生した新型肺炎に感染した結果とすることにほとんどの人間が異議を唱えませんでした。SCP-XXXXの発見までの間、この収容違反を鎮圧するために死亡した人間は0名、新型肺炎で死亡した人間は██名と公式に記録されていました。

この事件の後SCP-XXXX収容のためにサイト-████が建設され、チームXXXX - "ライオンのはらわた" が組織されました。チームXXXXはSCP-XXXXの収容を不可能であると判断し、現在に至るまで撲滅作戦を続けています。その成果として、かつて膨大な種類が存在したSCP-XXXXの変異体は、僅か1種類にまで削減されました。

撲滅作戦中にSCP-XXXXの変異体に汚染されていたことが判明した実在の巨大な疫病には、██病、████かぜと現在呼ばれている概念が該当します。

 

 

 

 

要調査事象 - 1961.11.27:

19██年██月██日、██████州にて大型車が男性3名に衝突する事故が発生。被害者である男性Aは全身を粉砕された結果、肺炎により即死。男性Bは下半身を吹き飛ばされたものの即死せず、病院に搬送されたが約10時間後に死亡。死因は大量出血が原因で生じた肺炎。男性Cは左腕を失うだけで済んだが、事件から2年後に首吊りを行った。検死解剖の結果、肺炎を用いた自殺と診断された。3人の肺炎が全て同一のものと明らかになると、医学論文上で「車両衝突性新型肺炎」として報告された。

 

 

要調査事象 - 1964.03.02:

19██年██月██日、████████の大統領であった████・██・███████がパレード中に公衆の面前で頭部を弾丸に貫かれた。辺り一体は一時的なパニックに陥ったが、数分後に大統領が死亡し肺炎であった事が誰の目にも明らかになるとすぐにパニックは収束した。付近では少し前から新型肺炎が流行していた。

 

 

要調査事象 - 1967.08.15:

█世紀に起こった██████の戦いにおいて、交戦中だった████と██████の両軍が前線地域での疫病発生を理由に撤退。多くの兵士に全身から出血する、頭部や四肢が欠損する、身体が武器で貫かれる等の症状が見られ病死した。両軍が撤退した後に病死する者は出なかった。以上の経緯をもって████と██████は一時的な和睦を結んだ。この戦いは疫病のため約██万人の犠牲者を出したが戦死者は0名だった。現在の医学的知見によれば実際の死因は新型肺炎だと推定されている。

 

 

 

 

「この病気に限って言えば、感染した人間が死亡するのではなく、死亡する人間が感染したことになるのです」 ── ██████ 博士

 

 

 

 

目録 - 削除済

 

 

手記 - 2013.06.14:

ああ、クソ、完全に打つ手無しだ。結局のところ俺たちのクソは半世紀もかけて一体何をしやがった?

昔この世には無数の肺炎があった。クソ馬鹿馬鹿しい事にこの報告書の初期のものにはSCP-XXXX-372891までご丁寧に記載されていたんだ!

俺たちが最初にクソやったことは変異体の見かけ上の数を減らすことだ。撲滅作戦は順調だった。最初はな。少なくとも順調に見えたんだ、結局のところそれが何の意味もない徒労だとも知らずに。

最終的に俺たちは遂に変異体の数をたった1つにまで──ただひとつのSCP-XXXX-1にまで──集約する事に成功した。SCP-XXXX-1に全てのヒトが既に汚染されきっていて、簡単には除去不能だと分かったのを除けば、作戦はクソほど大成功に見えた。ああ、そうだ、そう見えたんだよ、畜生。

だって後は報告を記憶処理部門に回して地球サイズの記憶処理爆弾を1発撃つだけでこの破滅的な情報災害が終わるんだぜ? Kクラスシナリオを引き起こせるような他の厄介な異常存在と違ってそれがどれほど楽なことだと思う? カバーストーリーだって例えば大型発電所が爆発した衝撃波が地上を覆ったとかで十分なんだからな。記憶処理部門じゃない俺にだって簡単だって分かるレベルだ。

俺たちは作戦の成果とこの後の手続きを記憶処理部門に回そうとしたよ、だけどあの朝、誇り高い我がチームに一人だけミーム部門の標準的な内服薬を飲み忘れたクソ野郎がいやがったんだ。そのクソは案の定ミームを直視しちまってSCP-XXXX-1を地上から撲滅したら大混乱が起きるとか言い始めた。終了されなかったのは幸運だったな。ただ内服薬の飲み忘れ自体が何かしらのインシデントを告げている可能性があったから、最終報告を上げるのは暫く延期になった。

そんで次の日、いつものように仕事前に内服薬を飲もうとしたとき、ふと昨日の事を思い出した俺はガタガタと手が震えたんだよ──多分チームの全員がそうだったろうな──自分達がいかに恐ろしいことをしようとしていたのかに気がついて。

あのクソが言ったことは正しかったし、クソなのは俺達の方だった。人類はSCP-XXXX-1と共存するしか無い。これを撲滅することは不可能だ。あるいは撲滅をしても代わりに別の何かを全人類に植え付ける必要があって、それをSCP-YYYYとでもナンバリングするだけだ。大体そんなことは現実的に不可能だし、打つ手なんかもう無いんだよ、畜生。

こいつは文字通り何もかもを新型肺炎に偽装していやがった。自分自身の正体すらもだ。だからミーム退治に必死で無機質になりすぎてた俺達は気付かなかった。「それ」が何かなんて考えないで、ただSCP-XXXX-1って理由だけで本気で地上から消滅させようとしてたんだ。「まとも」な頭で考えれば最後に残った「それ」が何かなんてクソほど明らかだったってのに。記憶処理部門のカタブツどもは、俺らが「それ」をSCP-XXXX-1だって言ったら何の疑問も抱かずに爆弾をぶっ放してただろうよ。

なあ、もしSCP-XXXX-1が無いとしたら、そこにあるものは何なんだ? SCP-XXXX-1がまだ存在しなかったとき、人類は一体どんな世界を見ていたんだ? あるいは人類が始まった時からこいつはずっと俺達の側にいたのか? 誰にもそれを思い出すことは出来ない。

人類がSCP-XXXX-1を忘却したら、その後に起こる混乱がどれほどのものになるのかは想像もつかない。それは人類がある概念を失う事を意味するからだ────

 

 

 

────現在の世界において、SCP-XXXX-1は「死」という病名で呼ばれている。